Century romance
「なぁ糞アル中・・・」
しばらくぼーっと手紙を眺めていると、ヒル魔が話しかけてきた。
「なんだ?・・・あ、オイ!」
俺の背が小さいのをイイコトに、手紙を奪い取り、頭上に翳すヒル魔。
「なんだ・・・この人こねぇのか」
ぴらぴらと手紙を揺らすヒル魔。
「あ? " お会いできることを楽しみにしています " って書いてるじゃねぇか」
バカかテメェは。 そう小さく悪態をつくと、ヒル魔から一発 愛 を受け取る羽目になった。
「よく見ろよ、その前。" 私はいけないのですが、いつか "って書いてるじゃねぇか」
「・・・本当だ」
「・・・残念か?」
ケケケ、そう笑いながら俺に尋ねる。
「べ、別に そう言うワケじゃ・・・ねぇような、それも違うような・・・」
「よし、脅迫手帳収納。」
「人の話を聞けーっ!」
目一杯ジャンプをして、悪魔(ヒル魔とも言う)の手から、手紙を奪い返す。
「聞いてるぜ? ・・・で、この人とはどーゆー関係だ?」
知ってどうする・・・?
「お前だけには言えん」
・・・カチャ
「ハ、昔 付キ合ッテタ彼女デス」
半ば強引に言わせられた・・・
「ほーぅ、別れた原因は、テメェの浮気だな」
「まだ別れたなんて、一言も言ってねぇだろ!」
「・・・じゃあ、まだ続いてんのか」
「・・・いや。・・・わからん」
「んだ、そりゃ・・・」
「別れも、プロポーズも何もしねぇまま、俺がアメリカに行った」
・・・それ以来、一度も会ってねぇ。 俺はそう続ける。
「彼女、何も言わなかったのか?」
いつになく真剣な眼差しのヒル魔。
「あぁ。 ただ手振ってた」
「じゃあ、テメェのこと待ってるんじゃねぇのか?」
「さあな・・・」
・・・は、どんな気持ちで、俺を見送っていたのだろう。
ただ・・・笑顔で俺に手を振り続けていた。
笑顔で手を振る。 コレがなりの優しさだったんじゃないか_____
ホントは、俺にアメリカへ行って欲しくなかったんじゃないか・・・
ずっと自分の傍で、笑ったり、怒ったりしたかったんじゃないか・・・
こう、自分に都合のいいように考えてしまうのは、惚れた弱みだろうか・・・
「糞アル中。」
「ん?」
しばらく物思いにふけっていると、ヒル魔が俺を呼んだ(いい加減名前で呼べよ、ヒル魔
「彼女に、言いたいことがあるんだろ?」
「ぃゃ、何もない」
あえて嘘をつく。 本当は・・・言いたいことが山ほどある。
「嘘つくんじゃねぇよ。 良いのか?・・・彼女に何も言わないままで」
・・・良い分けないだろ
「別れでもプロポーズでも、言いてぇこと何でも言って来いよ」
言いたいこと・・・
「彼女は、テメェの言葉を待ってんだ」
「・・・だが、今から行ったんじゃ、電車は・・・」
「あー今日、電車 何分か遅れるって言ってたぞ。 ・・・走れば間に合うんじゃね?」
さっさと行けよ、俺のケツを1発蹴り飛ばすヒル魔。
" ありがとな、ヒル魔 "
俺は後ろ手にヒル魔に合図を送り、そのまま走り出した。
__________ 愛しい彼女のために・・・
「ったく、世話がやけるぜ・・・」
溝六を見送った後、ケータイを取り出し、何処かへかけ始めたヒル魔
ピピピ トゥルルル、トゥルルル・・・ ガチャ
「俺だ。・・・あの事バラされたくなかったら、電車の発車時間、遅らせろ」
ま、せいぜい頑張れよ。
いつもよりも少し、優しさの増した声が響いた。
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・・・どうしちゃったの、ヒル魔さん。(何
何故か凄く格好良く見えるよ!(きらきら
あぁ〜こういうヒル魔好きだー!(注:溝六夢です
毎度毎度ですが、ヒロインさん出てきませんねぇ・・・