* 今すぐ会いたい *










『悪いな、仕事が入っちまった』





そんな電話がかかって来たのは 恋人達のハッピーイベント

クリスマス・イヴの当日だった



「うそっ、だって厳 絶対に仕事は入れないって」

『先方がそこをどうにかと言ったんだ。良いだろ?7時には終る』

「そういう問題じゃ−」

『悪い、キャッチだ。  じゃあ7時にな」

「え、ちょ  厳っ」



一方的に切られた電話は虚しく私の手の中に収まる

未だに通話を切らない私の携帯はイルミネーションを光らせて

少しだけ冬の暗い部屋に小さな光を作っているばかりだった



「もう、なによ・・・厳のバカ」



私は暗い部屋の角でクッションを抱きかかえて座り込んだ

何度か母が尋ねて来たような気がするが

今私はそれ所じゃない

気を紛らわせるために携帯を開いてメールする

だが



「何よぅ、みんな揃いも揃って!
何が“彼氏と居るんだから邪魔しないで”よ!私だって本当なら・・・」



友達とはこんなモノである

は携帯の登録名簿から新しいターゲットを定めた



「“栗田〜今何してる?”」



同級生で中学からの付き合いの栗田だ  ヒル魔でも良かったが

彼ならきっと “っけ、寂しい糞女は愚痴るしか能がねぇのか”

なんて言いそうで却下

はぁ と溜め息を吐いていると携帯に受信反応



「“今ね、セナ君やヒル魔達とパーティーだよ!
も来る?  あ、ムサシとだっけ?楽しんでね!!”」

「“それがね、厳ったら仕事入れちゃったのよ”」



落胆した格好で送信すると突然携帯には電話が入った



「はい?」

『ざぁっけんじゃねぇぞファッキン女!!一々ムサシ
の事でファッキンデブにたかんじゃねぇ!』



「なによぅ、寂しい女よ私は、だからってあんたに
止められる意味がわかんない!」

『寂しいならさっさとムサシんとこ行きやがれ!』

「だぁーかぁーらぁ〜  厳は仕事」

『行ったってどうせ控え室があんだ、そこで待ってりゃ良いだろが!
折角のイベント愚痴なんかに邪魔されてたまっかってんだ!』

『ヒル魔ぁ〜、駄目だよそんなこと言っちゃ!
/黙ってろファッキンデブ!!』



『兎に角、○○坂の×代公園付近のハイツに行け!絶対だ』



ブツン ときられた電話を睨みながら 私は結局悪魔の命令に従った





ぅ〜  と唸りながら指示された場所に足を運ぶ

お昼はまだの筈とも思い 差し入れ程度に弁当を作ってみた

その荷物が軽く沈んだ の手に重い

彼氏無しでタダデも寂しいのに そんな時に限って雪が降る



「彼氏居る時に降れよぉ〜  畜生」



そう言えば 畜生 っていうといつも厳は 汚い って正してくれたっけ

いつも居る筈の彼は今は隣に居ない

やっぱり



「やっぱり会いたいよ、  厳。」






ねぇ、あれ誰だと思う?






ヒル魔に教えられた場所についてみれば

業者の人達が忙しそうに あっちへこっちへと行き来している

その中でも忙しく業者の人々に指示を出す我が愛しの彼がいた

止めると言った筈の煙草も 難しい顔をした口に咥える

何となく、もう少しだけ ここで見ていたい気がした

トントン

が暫らく物陰に立って厳を見ていると

の肩を誰かがたたいた



「どうしたの?誰かに用事?」

「あ、や  その・・・」

「まぁまぁ、誰だい?ほら、ついておいでよ」



男はそういうと さぁさぁ と言って の背を押し

一端休憩となった業者達の所へと押していった



「おぅ、玉八  何処行ってたんだ・・・ょ・・・・・・ ・・・」

「なんだ、厳ちゃんの彼女だったの」

「・・・・・・ どうし・・」



あー俺ら席外すよ な、  と玉八は皆を引き連れてその場を移動した

暫らく二人の沈黙が続いた後、 は思い切って

ズイっと紙袋を差出した



「あのね、差し入れ!それだけだよ!!じゃあ7時だよね うん、バイバイ」

っ」



足を踏み出した瞬間、 はグイっと手首を引っ張られ、グラっと厳に倒れた



「あー、待ってろ  退屈だろうけど・・・な・・・・・・」



後ろに支えられた形のまま、ギュゥっと後ろ抱きになる

ポロリ  ポロリ

の頬を透明な雫が伝う・・・・・・



「悪かったな、そのよ・・・仕事入れて」



はブンブン と首を振るだけしか出来なかった

厳の抱き締める腕に力が増す



「まだ仕事あるけどよ、俺が見える所に居ろよ?」

「寂しかったの」

「ぁぁ、悪い。   晩飯考えとけ、なに食いたい?」

「フランスりょう  り  ・・・・・・」

「それは無理だ」

「うん、冗談。   王城の餃子が良い」

「うし、待ってろ  今日は餃子な」

「うんっ」



夜、手を繋いで王城へと向う二人の姿が見受ける事ができたのは

王城の生徒極一部であったらしい











=アトガキ=

えぇぇえええ。

微妙になってしまいましたが・・・ムサシ初!と言う事で

大目に見て下さい。

というか、王城の生徒は一体クリスマスイブに何をしていたの?

いえ、私の愛する某筋肉バカの彼なら聞かずとも解りますが

他の子達は一体!?

取り敢えず、こんな夢になってしまいましたが

罵声だけは勘弁して下さい。

でわ、メリー・クリスマス!