* 家まで *










真っ暗な夜空に丸く太った月がでた

季節は秋の中旬で、関東では昼間暖かくとも夜になると何か薄い上着を

着なくては肌寒いだろう

部活の帰り道、進清十郎と中学からの同士である桜庭春人は

何を話すでもなく歩いていた

ある角に差し掛かったときだった

桜庭が ふ と呟いた



「今日は満月だったんだ」

「......あぁ」



そこで会話は終ってしまう

桜庭は居た堪れない気持ちになり話をそらすことにした



「な、なぁ進」

「?」

「家の姉貴覚えてるよな?」

「ぁ、ああ。それがどうした?」

「進さ、何気に気になってたりしてない?」

「な、何がだ」

「あ、そう...とぼけるちゃう...ふ〜ん。今日さ、が帰って来るんだ」



進は そうか と言うと下を向いてしまった

そしてまた沈黙が出来る

しかし桜庭は先ほどまでの気持ちに成ることはなく

寧ろ進の方が居た堪れなくなっていた

こつこつと二つの足音が人通りの少ない道路に響く

しばらく歩いていたときだった

二つの足音が三つになった



「あっ」

「!!!」

「春人?部活帰り?」



十字路に差し掛かったとき、反対方向から話題の主だった が現れた

桜庭は声をあげ、進は驚愕した表情を浮かべて目を見開いていた



「うん、そう  姉貴こそお帰り」

「ただいま」

「......あ、ねぇ 姉貴、憶えてるかな?進だよ」



桜庭は進を前に出す

進は一礼して こんばんは と挨拶した

そんな進をしばらく見ていた

勿論 と言って笑う



「三年前より随分頼り気になったね、春人もだいぶがっしりして」



再び を含めた沈黙が流れた

それを破ったのはいきなり声を上げた桜庭だった



「あっ!!」

「「!!」」

「やばい!学校に忘れ物!!なぁ進、すまないんだけどさ、
姉貴家まで送ってくんねぇ?」

「春人、私なら大丈夫だし明日取りに行けばいいんじゃないの?」

「明日までの宿題を忘れたんだ。そう言うことで、進!頼んだぞ!」

そう言うや否や桜庭はいつもより早く掛け出した

二人になった路地は暫く会話は出て来ない

先に言葉を掛けたのは だった



「...部活楽しい?」

「はい」

「春人はどう?」

「桜庭は彼なりに頑張っています。悩んでもいるようですが」

「そっか...進くんにはいつも弟がお世話になってます」

「いえ......」



進は下を向きながら話していると不意に顔を上げて

隣に がいないことに気付くと後を見た

そこには旅行鞄を地面において座っている がいた



「...疲れました?」

「うん、ちょっとね...空港から王城までバスで来たけど、それから
どうしてもタクシーがつかまらなくって歩いて来たの」

「...少し.....そこの土手で休みましょう」



進は の荷物を持ち上げると先に土手へ歩いて行く

それに従うように も土手へと向かった

進が土手に腰を下ろすと も一緒に腰を下ろす

そして普段は喋る事の少ない進が話し始めた



「..その、アメリカへは何をしに?」

「ん?スポーツドクターにでもなろうかと...ね。勉強しに」

「どうでした?」

「うん、凄かった...皆レベルが違ってて、私なんか着いていけるかなって
弱気に成ってしまったもの、でも  実りのある留学だった」

「......夢があるんですね...桜庭さんは」



進は言葉を言いきらぬうちに手で正され、出しきれなかった



「桜庭さんじゃ春人か私、どっちかわからないなぁ」



意地悪っぽく笑う に少し赤面しつつも

進は 何と呼べば? と聞きかえす



、で良いんじゃない?好きに呼んでちょうだい」

「......... ...さん.......では」

「ん〜 まぁ いっか。うん、じゃあ私も進くんじゃなくて
清十郎くんって呼ぼうかな」

「どうぞ......今日は満月ですね」



進は先ほど桜庭が言った事を口にした

は上を見上げて そうだね きれいだね と返す

そんな は月光に照らされどれほど綺麗だったか

思わず進は心にあったことを口にした



さんの方が綺麗だ」

「え!?//////」

「ぁ//////その......いえ何でもありません」



すると はクスクスと笑い始めた



「清十郎くんは男らしくなったね」

「それは.....」

「うん、前よりずっと格好良いよ」

「ぁ...の..........」

「あれ?どうしたの?なんか...顔赤いけど」

「あ、暑いからです」

「暑がり?私は肌寒いけどなぁ〜」



そう言って自分の肩を抱き締め擦った

パサッ



「?」

「貸します。」

「でも」

「さっきも言ったとおり、暑いので......///」



は再びクスリと笑うと  ありがとう と言って上着を受け取った

土手から離れて二人は自然と互いの手を取り歩いた



家まで少し、遠回りをしませんか?






〜Fin〜









=アトガキ=

あぁ〜なんか進じゃないかもしれません......
純情進清十郎ここに参上!!
純情少年って大好きなんですよ...なんか可愛いじゃないですか
ただ、それだけ進は偽進になってしまうんだすけどねぇ〜
まぁ、今回は私の自己満足ということで(いつも自己満足のくせして)
それでわこれで