* 黄昏に贈る3ヶ月。 3 *
今週末に、アメフトの練習試合があると告げると
は喜んで見に行きたいと言ってきた
「お弁当作って行くね」
「いや、張り切ってくれるのは嬉しいんだが、大変だろう」
「ううん、全然!試合後なら...お肉だね!お肉と...
あ、レモンの蜂蜜漬けも持ってくよ、疲れたら欲しくなるもんね」
「すまない」
「良いよ、楽しみだから!」
「場所解かるか?なんなら迎えに行く」
「ホント?実は解からなくってタクシーで行こうかと思ったの」
「タクシーなんて金の無駄だ、やはり迎えに行こう」
「ありがとう」
電話を切れば横のドレッド頭が煩くし始めた
「な〜にぃ?お兄ちゃんったら、17年生まれて以来の初恋って奴かしら」
「ドレッド、気色悪いカマ口調止めろ」
「ド素人なお兄様に恋の鷲づかみアドバイス!」
「要らん!」
「まぁまぁそう言わずに、女なんてゴウインに口付けちまえば
コロっと落ちるもんだぜ?」
実際もう落ちてるだろう、付合ってるんだから
「おっと、お兄様は告白は済んだんだったな、失敬失敬...」
「おちょくるな」
「んだよ、折角のアドバイスを!
まぁ強引にvは告白前だろうが後だろうが効果てきめんだがな」
「あぁ煩い!向うへ行け!」
「おお、怖。俺も迎えに行くの着いてこうかな」
「来るな!」
阿含はニヘラニヘラと笑いながら俺の部屋を出て行った
このドレッドが
試合当日、
は夏らしいワンピースに
可愛らしい帽子といったいでたち待っていた
「すまない、待ったか?」
「全然、早く行こう!」
時々解からなくなる
こんなにも元気なのに
は本当に不治の病なのか...
試合会場に着くと俺は取り敢えず選手席の奥のベンチに座らせた
「監督、彼女持病持ってるんですよ、あまり太陽に当ててると
日射病起こすかもしれないのでここにいさせてもいいですか?」
「ああ、構わん...むしろ........」
監督は
の方を見て笑った
「戦意向上で良い」
それを聞き俺も
の方を見れば部員全員が
の周りに集まって質問攻めにしていた
「ほー、こいつが雲水の女か」
「え!鬼本当か!?ひょー鬼すっげー何処で会ったんだ?」
「む、雲水め 抜け駆けおって」
だんだん
が押されて見えなくなって行くのに不安を感じるんだが
その時丁度挨拶の合図が出された
もなんとか見えるくらいまで戻って安心する
今回の敵は最近成長が急激に起きている高校だ
勝てる要素はいくらでも在るが
こいつは負けられない
チームとして、男として
「
、この試合は
の為に勝つっ」
「......雲水くん.........うん、頑張って!」
結果は一点のリードも許す事無く我等が神龍寺ナーガの圧勝
の弁当は大半が部員達に奪われたが
レモンの蜂蜜漬けだけは死守したお陰でなんとか食べる事が出来た
「今日は本当にありがとう!すっごく楽しかったし、かっこ良かったよ」
はさっきからずっとそう言って誉めちぎっている
悪い気分はしないが...なんだかくすぐったい
これが恋人なんだ なんて今更ながらに実感する
「そうか、また...誘っても良いか?」
「喜んで!!」
帰りの公園、俺は何も言わずに
の唇に自分のを当てた
レモンの味なんて誰が気付いたのだろう
俺もさっきレモンを食べたせいか、レモンの味がする
「おい、知ってたか?」
7月の末、明日8月を迎えようとした金曜日
隣の阿含が話しをふってきた
「知ってるかって?何をだ」
「明日が何の日かってことだよ」
「明日?何かあったか?」
「.........はぁ
」
俺がそういうと阿含は思いっきり
俺に向って溜め息を吐いてくれた
「お前本気で
と付合ってんのか?」
「失礼な事を言うな、れっきと付合ってる」
「彼女の誕生日も知らないでか?」
「明日がか!?」
「おーマジ知らなかったのか」
「そんな話し一切でなかった、なのに何故お前は知ってるんだ!」
「俺の情報網をなめちゃーいけないな」
阿含は得意気に腕を組んでそう言った
それにしても明日......
は本当に何も言っていなかった
......何故?
兎に角俺は折角解かった祝いの日の為に
何かプレゼントを用意しようと思った
だが、一体何をプレゼントすれば?
阿含は 「俺の一日をお前にやる!」 とか俺様な事言うし
部員は部員で 「鬼薔薇の花束だぜ!!」 某チャクラの男
「こういう時はやはり実用性のあるだな」 某山男
『絶対ペアリング!!』 某西遊記達
それぞれがバラバラで、なにを用意すればいいのか
しょうがないから俺は
の好きなケーキを持って
の家へ出向いた
「あ...雲水くん......どうしたの?」
「
、今日はお前の誕生日らしいな」
「どうして...」
「家に何故か刑事がいてな、そいつが教えてくれた」
「.....そっか、わざわざ来てくれたんだ、ありがとう...」
「いいや」
部屋に入れば何時もと変わり無い風景
誕生日だと言うのに何故こんなにも寂しいのか
「......誕生日に祝ってもらうのって初めてなの」
「え?」
「家って共働きでしょ?それに兄とはあんな関係だし...もうずっと
祝ってもらった覚えが無いんだ、
だからすっかり自分の生まれた日なんてって思えて......」
「........これ」
「?」
「何がいいか解からなかったから、それにしたんだ 悪いな」
は丁寧に包装紙を取っていく
ゆっくり箱を開ければそこには
“お誕生日おめでとう、生まれて来てくれた事に感謝する”
と書かれたチョコプレートが乗っかったレアチーズケーキが出てきた
「おめでとう」
は声を殺して俺の胸の中で泣きじゃくった
一体どれほど泣いていたかわから無い程に
何度も ありがとう と呟いて
「生まれて良かった.....」
「ああ...」
続く。
=アトガキ=
全く持ってシリアスに程遠いんじゃないかこの夢は