* 黄昏に贈る3ヶ月。 2 *
三度目の再開後、俺達は随分親しい関係になった
とはいっても恋人とかそういった仲と言う訳ではないが
だが俺はこの関係も悪くないと想う
あの日、なんで俺があんな行動をとったのか全く解からなかった
だから考えてみた
きっと、話した回数は少ないにせよ
俺は
が何処かへ行ってしまいそうで怖かったんだ
忘れられない存在に成っていたんだと
これが正直、どういう意味かは分らないが
俺は今の関係で取り敢えず満足している
「こんにちわ雲水くん」
「こんにちわ」
俺達は良く帰りが一緒になったりした
変える方向もほぼ一緒、帰る時間も何故か一緒
聞いてみれば今月...7月の中旬に学校で写真部による写真祭があるらしい
一般人来校は許可されているらしいから俺も行ってみると言えば
さんは嬉しそうに じゃあ頑張るね
と言ってカメラを構え俺を撮った
そして俺はふと思った
彼女の今まで撮った写真を見てみたいと
「
さんの今まで撮った写真、見てみたい」
「写真際があるよ?」
「今までのが見たいんだ」
少し黙った
さんを見て俺は無理を言ったかと不安になったが
さんは顔を上げて いいよ と言ってくれた
女の子の家に上がるのは初めてだ
結構大きな家だった
どうやら両親共に病院を経営しているらしい
さんは部屋の前まで来ると 向いの部屋には入らないで
と俺に念を押してきた
別にいろいろと物色するつもりはないが
と言えば クス と笑われた
「違うよ、トイレと間違えて入られる前に言っておいただけ」
「あの部屋は?」
「兄さんの部屋だから」
それを聞いて何と無く分った
さんの部屋に入れば壁一面黄昏色をしていた
よく見れば全部が写真で黄昏の空を映したものだった
「変な部屋でゴメンね。はい、これが今まで撮ってきたやつだよ」
から渡されたものは優に10冊はあるアルバムだった
俺はそのまま床に座りアルバムを開いてみた
晴れた空、曇の空、雨雲の空、雨の空、雪の空、雷の空
その他にいろんな空があった
どれも綺麗で、どれも表情のある写真で
全てに命があった
こんなに表情のある写真は初めて見る
俺は
さんの撮った写真に無我夢中で見入っていた
そんな中 空ばかりだった写真の中にたった一枚
他のと違う写真があった
依然空には変わり無かったが その写真には一羽の鴨が写っていた
自由に空を飛ぶ鳥、今にも動き出しそうな鳥
遠い写真にも拘わらず、その鳥の鼓動が聞えそうな
そんな写真だった
「その写真ね、知らないうちに撮っていたの
不思議でしょ?一度撮った写真は忘れないんだけどな」
その一言でこの写真の特別さが一瞬で分ってしまった
命の写真なんだ
随分遅くなってしまった俺はそろそろ帰らないと夕飯が抜きになる
と言って立去ろうとした、が
さんは
食べて行ったら?と言う
「大丈夫、今日は両親も兄も仕事で帰ってこないんだ、
一人の食事って寂しいでしょ?ね?」
「・・・・・・
さんがそういうなら......」
さんの作ってくれた料理はとても美味しかった
俺は珍しく寝坊した
理由にならないかもしれないが
夢で
さんを見た
とても儚い、出会った当初の頃の
さんを
夢の中の俺は何処かへ行ってしまいそうになった
を抱き締めていた
行くな、行くな と何度も言いながら
「おい雲水、珍しく寝坊か?遅刻するぞ」
何時も起こす側だった俺は何か違和感があったが気にしないでおいた
今はこの胸の中にある感情を何か気付くのが先だったから
何時ものように帰りが一緒になった
さんと
まだ明るい黄昏の空の下帰路についていた
さんは少し小走りに先へ進むと振り返って フっ っと笑った
「.........」
「............雲水..くん?」
俺は
さんの華奢な肩を壊れないように強く抱き閉めた
さんの鞄は驚きで手元から地面へと落ちていた
俺はそれをゆっくり拾うと
さんに渡した
そして、虫が囁くほどに伝えた
「彼女になって欲しい」
我ながらなんて直接的でセンスの無い告白なんだろう
と、言った後になって思った
さんは黙ったままだった
やっぱり駄目かと思い、謝ろうとした時
さんは俺の手を握って うん と言ってくれた
俺は
さんを送り届ける為、
さんの家の前まで来ていた
「ありがとう、また明日ね」
「
さん、本当に良いのか?」
「うん、あと...
って呼んで?」
俺は
の手を離すとそれと同時に家から男性が飛び出してきた
「
っ!お前って奴は、また発作が出ても知らんぞ!!」
「お父さん...」
はお父さんらしき人の口から出た単語を聞いて青ざめたように見える
発作
発作?
なんの?
ホッサ.........
「誰だこの男は」
お父さんは俺を見るなり睨み付けてきた
「彼は...その、私の彼氏だよ」
「
の?...名は?」
「金剛雲水といいます」
「......では金剛くん、恋人ならば知っているだろう、このこが
死んでしまうかもしれない不治の病を持っている事を」
それでも付合ってくれるんだね?
正直それを聞いて驚いた
今までそんな話し、聞いた事も無い
お父さんは 娘を泣かせるなら覚悟しろ と言い残し
迎えに来ていた車に乗って行ってしまった
俺は静かに
を見た
「本当か」
「うん」
「黙っているつもりだったのか?」
「言おうと思った、けど...タイミングが解からなくって」
「......そうか...」
暫らく黙り込んでしまった俺達
日も傾いてしまった時、俺は帰ろうと玄関に背を向けた
「...病気に負けるな、俺が....頼りないが俺がずっと側にいる」
背を向けてしまった俺には
の顔は見えない
どんな顔をしているだろう
驚いているか、笑っているか、それとも.........
ずっといるから、側に、君の側に......
続く。
=アトガキ=
全く持ってシリアスに程遠いんじゃないかこの夢は