夕日が君の顔を照らした


綺麗な顔をした君を


俺は今、


只、静かに


眺めている事しか出来なかった











* 黄昏に贈る3ヶ月。 *










「阿含!また練習をサボる気だな!?」



男子校神龍寺に金剛雲水そのひとあり

とは良く言ったものだ

俺は今日もこうして弟の阿含を引き止める事は出来なかったのだから

監督はしょうがないと言うし、部員達も今に始まった事じゃないと言う

俺だってもう諦めてる、だが、それは部員として

兄としてはやはり部活くらい出て欲しい

女にケンカ、そして女にケンカを繰り返す弟

俺はいつかお前が壊れてしまいそうで少し怖い

半ば肩を落して部室に戻れば部員達は何やら雑誌を覗き込んでいた

気付かれないように覗いてみれば俗に言う

アレな雑誌

確かに健全な男子生徒にはこれは普通だろう

増してや普段接触する機会の無い男子校だ

そういう事に関しては他の学校の男子生徒より欲は強い

だが



「喝っーーーーーー!!!!」



『ぎゃっっ!!!』





部員達は飛び上がって驚いた

精進が足りん、乱れている!!



「莫迦者!なにしてんだ!!」

「あっ、雲水っ...いやぁ〜そのさぁ〜」

「男として当然の行為をとってしまったのだ」

「山伏さんまで何を言ってるんだ、今は部活中だろう!」



しかし、こんなことは日常茶飯事であったりするから頭が痛い

取り上げても取り上げても次の日は何処から見付けてくるのか

捨てたはずの雑誌はコイツ等の手の中

今度から焼却炉に入れてやろうかとも思う

その日、練習らしい練習は出来ずに解散となってしまった

何故こうも皆乱れているのか

俺は溜め息を吐きながら帰り道を歩いていた

その時上からカシャっという音がした

見上げてみればパジャマ姿にカーディガンを羽織った

同年代くらいの少女がこの黄昏時の空をカメラに収めていた



「寒くないのか?」



あっ

俺はいつのまにか少女に声を掛けていた

一体何がしたいのか、自分でもはっきり言って解からない

だが、声を掛けてしまったからには後戻りは出来ないのだ



「あの」

「寒くないのか」

「あ、はい......部活帰りですか?」



少女はなんとも可愛らしい笑顔で呟くような声で言った

一瞬だが、俺の胸が掴まれて様に苦しくなった気がした

何故なのか



「ああ、君は...風邪でもひいたのか?なら早く寝た方が良い」



俺は名前も知らない少女に余計なお世話かとも思ったが

またつるっと言葉を口にしてしまっていた



「ぇっと...そうですね」



少女はそういうと さようなら とそう呟いて部屋に戻って行った

結局名前は聞かずにいた

次の日も彼女はベランダに立って昨日とは全く違う

黄昏を撮っていた

パジャマ姿でカーディガンは昨日と変わり無い



「また撮っているのか...」



彼女は俺に気付いたように あっ と声を上げて笑いかけた



「また部活帰りですか?」

「ああ、君こそ風邪なんだろ?寝ていないといけないんじゃないのか?」

「......はい、そうですね...」



その次の日、彼女はベランダにはいなかった

きっと風邪が振替したんだろう

だから寝ていろと言ったのに

だが俺は何故か落ち着かない気分だった

その次の日も彼女はいなかった

その次の日も......

その後ひと月、彼女の姿は見なかった




いつしか俺は彼女の存在を忘れかけていたそんな日

帰路の公園に一ヶ月以来見る彼女の姿を見止めた

彼女はまた空を撮っていた



「久しぶりだな」



俺は彼女の腰掛けるベンチの前に立った

彼女は眩しそうに見上げると こんにちわ と帰してくれた



「そう言えば風邪はすっかり良いみたいだな、まぁ、今更だが」

「お蔭様で」

「俺は何もしていない、そう言えば自己紹介していなかったな」

「...そうですね、もう三回目に話すのにどうして言わなかったんだろう」

「三回目だからまだ会う機会が有りそうだな」

「えと... です、

「俺は金剛雲水、そこの神龍寺に通ってる、二年だ」

「へぇ、奇遇だね 近くに女子校あるでしょう?私そこの三年」

「三年っ!?すまない、タメ口だった いや でした」

「ううん、良いよ気にしないで。金剛君座ったら?」

「え?」



さんはポンポンと隣を叩いて示した

取り敢えず断わるのもあれかと思ったから俺は座る



「何部?」



さんは行き成り問い掛けてきた



「え?あ、あぁ...アメフトだ」

「アメフト?へぇ〜カッコイイね、私見たことない」

「見たことないのか?なら今度呼んでやるよ」

「本当?   
ありがとう...




その時の の笑顔が忘れられないくらい寂しく見えた

がいつも通りに笑うと公園の入口から声が上がった



?こんなとこいたのか、早く帰れといつも言われてんだろ?」



死んでも知らねぇぞ


さんにそう言った男は至極愉快そうに笑いながら言った

それでも さんは笑って うん と言う

男は ッチ と舌打ちして 早く死ねば良いのによ

なんて罵りその場を立去った



「兄さん冗談キツイな.....」

「兄さん?」

「うん、あの人私のお兄さんなの......

いっつもあんな冗談言うの、キレが在り過ぎるよね。すごいや...」



さんはさっきのように笑って立ち上がった



「じゃあそろそろ帰るね」

「... さん、辛くないか?」

「辛い?ううん、なんで?」

「あんな事いわれて......」



さんは一瞬驚いたように目を開いたが直ぐに笑って

慣れてるよ   と言い立去ろうとした

俺はそんな さんが弱くて儚そうに見えて仕方なかった

そして 気が付けば ギュっと さんの腕を掴んでいた



「なら、どうしてそんな哀しい笑顔(かお) するんだ」

「ぇ.........」



俺は力強く掴んで手に気付いて咄嗟に謝り手を放した

さんは俯いたままだった



「送る......」



もう殆ど人の通らなくなった道を

俺は さんの顔をチラリと見ながら黙って送った





続く。











=アトガキ=

咄嗟に思い浮かんだこのお話、シリアスが苦手と言っておきながら
何故か書いてしまったこの駄文
はぁ〜しかも雲水ちゃんだし
そしてまた長編風味いやいや、幾つ書けば気が済むよ自分
今更ながらに言っておきます、シリアス苦手なかたは
読まれない方が無難かと思われちゃったりします。
まぁ、私が書くんですからシリアスになっているかどうか...