* 麗しきかな青春の日々 *










はおどおどとしながら ここ、アメフト部の部室前を行ったり来たり

を繰り返していた

の目的はただひとつ、兄原尾王成への差し入れと称し

部の柱とも言える彼、番場衛に逢いに来たのだ



?何をしてるんだい?」



何時までたっても勇気を出せずに居た の後ろには

同じクラスでアメフト部の主務をしている白田黒澄だった



「あ、澄ちゃん・・・うんっと・・・・・・お兄ちゃん・・・」

「あぁ、ホラ 入りなよ。 だったら皆歓迎してくれるんだから
これからは堂々と入っておいでよ」



白田は の背中を押しながら部室へと入った



?どうした」



部室に入ると王成が目敏く を見つけ声をかけた



「う、うん・・・・差し入れ・・・・・・と、頑張ってるかな?って」



はそう言うと鞄の中に入れていた小瓶を王成に手渡した



、いつもすまないな。
それから・・・もう少し堂々としていても良いんだぞ、お前は余の妹だ」

「はい、えっと・・・・・・」



は俯いていた顔を上げ、遥か頭上にある番場を一瞥すると直ぐに

王成に目線を戻し 頑張って と呟いた





部室を出て広い廊下を歩く

ほぅ っとため息を吐いてはトボトボと歩を進める



−今日もまた、眼を合わせられなかった・・・・・・−



番場に淡い恋を抱いて早半年

入学式を終えて既に半年経ったことになる

ひとつ上の兄は が同じ高校に入学することをひどく喜んでいて

入学式の日に部員全員に 自分の妹だ と紹介して回ったものだ

その時、最後に会ったのが番場だった

番場は無機質に「そうか、良かったな」と王成に言い

を見やるとその大きいな手のひらを

頭にポンと置いて「ようこそ」と言ったのだ

それが にとってすごく嬉しいものであった



がもう一度 ほぅ とため息を吐くといつの間にかたどり着いていた

自分の部室を眺め、ゆっくりと扉を開けていつもの指定席に腰掛けた



何も考えず、黙々と彫刻を彫り続けた

他の部員は一体何処へ行ったのか

部活開始時刻を回っても誰一人と来ず

は唯一人、時間と共に暮れてゆく空を背景に彫刻へと向かっていた

気づけばあたりはもう暗く、文化部の下校時刻は当に過ぎ

運動部の下校時刻を回っていた

そろそろ帰らねばと思い、 は荷物を持つと

扉に手を伸ばした その時だ

ガラ っと勝手に扉が開いた

は吃驚してしりもちをつき、ゆっくりと扉の向こうを見上げた



? まだ居たのか」



眼に入ったのは番場で、番場は の腕を

掴むと ふわぁ っと持ち上げた



「あの・・・番場さん・・・・・どうして?」

「あぁ、文化部は下校したはずだろう?なのに彫刻部のみ
電気が点いたままだったんでな、消しに来たんだが・・・・・・」

「ぁ・・・・・・気がついたらこんな時間になっていて・・・その」

「そろそろ学校祭出品の彫刻も作ると言っていたな、それか?」

「えっと  はい」



は恥ずかしくて顔を真っ赤にし俯きながら消え入りそうな声で答えた



「そうか、毎年彫刻部は優秀な作品を出している、
作品も楽しみにしている」



番場はそう言うと の落とした鞄を持ち上げ、暗くなった廊下をずんずんと進む

それを唖然として見ている に気づき

振り返った番場は手招きをして言った



「どうした?原尾は既に帰ったぞ、送るから早く来い」



送るから

はその言葉を聴くなり飛び上がり番場に駆け寄った

番場の隣で歩みを進める

すると は自分の手を何か暖かいものが包んだと解り、手を見てみた

見ればソレは紛れも無く番場の大きな手だ

は驚きつつも番場を見上げると、番場は

眼を合わすことなく言う



は暗いところとかが苦手だと原尾が言っていたからな
これなら怖くないだろ?」



はコクリと頷くとまた黙って下を向いた

煩いくらいに鳴り続ける鼓動が番場に聞かれてしまいそうで

はひやひやしながら帰路を進んだ



「ぇっと・・・・・ありがとうございました。」

「構わない、それじゃあ  また明日な」

「はい、おやすみなさい」

「ああ」



暗闇に去って行く番場を、見えなくなるまで見送った

見えなくなっても暫くそこにいると、玄関から王成が出てきて

心配していたと叱られた



暗闇に消える貴方はとても強い者に見えました

暗闇をものともせずに、堂々と蹴散らして

そんな貴方が、愛しい・・・・・・















=アトガキ=

「おかーさーん、紗々シルバーが無くなったよー」(←11/13のおやつ:爆)

はい、ついに書いてしまった番場夢

椿つんには「えーーー」と言われながらも厳しい世間の風を乗り越え書き上げました。

どうだったでしょう?自分では「あぁ、新鮮v」なんて思いながら

そんじょそこらではお眼にかかれない番場を書いたんですが

なんかこれ、続いてしまうかもしれません。

其処のところは不確かなので断言できませんが。あ、因みにこの頃は

原尾や番場、笠松たちはまだ二年生です、そして一年生の

ファンブックにしっかり紹介されている白田君です。

それでわそろそろ。